松林寺 大邱・八公山(パルコンサン)にある名刹

2017年1月9日月曜日

チェ・スンシル・ゲート

10月24日(月) 朴槿恵大統領、改憲演説。大統領の任期を4年、2期までにしようという内容だったが、この日の演説が彼女にとって最後の職務といっていいくらいの結果となった。この日の夜、ケーブルテレビのJTBCにより、チェ・スンシルが廃棄した(とされる)タブレットの内容がスクープ報道された。

10月25日(火) 朴槿恵大統領、崔順実(チェ・スンシル)国政介入問題を謝罪。このあと計3度も国民に謝罪を重ね、弾劾裁判を受けることになる、チェ・スンシル・ゲートの始まりである。国政の大混乱、大スキャンダルはこの週から始まった。梨花女子大学の紛争から始まった騒ぎが、まさかこれほど大きな騒動になると誰が予想できただろう。


韓国の名門女子大、卒業式で「総長辞めろ」の大合唱 背景に根強い学歴社会

韓国の名門・梨花女子大学の卒業式で、式辞を述べようとした総長に、出席者が「総長辞めろ」のコールを浴びせかけた。
梨花女子大では、学部新設計画に反対する学生や卒業生が建物を占拠し、学校側が警察を動員して排除にかかるなど、騒動が続いている。その背景を見ていくと、韓国の学歴偏重社会の根深さが浮かび上がる。
ハンギョレによると8月26日午前、ソウルの梨花女子大の講堂で開かれた2015年度後期の卒業式には「信頼を失った総長に梨花を任せられない」「警察1600人を学内に入れて梨花女子大を汚した総長は即刻辞職せよ」と書かれた横断幕が掲げられた。
祝辞を述べるため壇上に上がったチェ・ギョンヒ総長に、出席者が「梨花解放、総長辞めろ」とかけ声を浴びせた。総長は「皆さんの意思は十分分かった。5分だけ時間を下さい」と求めたが、かけ声はやまず、総長は祝辞を述べられなかった。学位記授与で、総長との握手を拒否した学生もいたという。
■背景に学歴社会のひずみ
教育熱の高い韓国は入試競争の過熱、学歴偏重社会のひずみが長いこと指摘されてきた。
2014年11月の韓国日報の世論調査では、「人間扱いされるには大学を出なければならない」に85.7%が「そう思う」と答える半面、「大学を出なくても十分に成功できる」と答えた人は35.6%にとどまる。
しかし、景気の停滞で大卒者の就職率も低下し、非正規雇用が増加している。こうした社会情勢の変化を受けて、韓国政府は高卒で就職した人が後からでも大学教育を受けられるように「先に就職、後で進学」というスローガンを掲げ、生涯学習の強化を打ちだした。その一環が、大学に生涯学習に対応した学部を新設することだった。2016年5~7月、モデル事業として梨花女子大など10大学が選ばれた。
しかし、ハフポスト韓国版によれば、韓国屈指の名門大学で知られる梨花女子大では、「美容、ウェルネス産業を扱う」とする学部構想に対し、「学位をカネで売るのか」と、在学生や卒業生から激しい反発が起きた。この問題を巡るオンライン掲示板では「難しい入試に合格して入学したのに、実業高校出身者が混ざると学校のレベルが下がる」などの書き込みもあったといい、学生側の「名門意識」も見え隠れする。

この騒動の中で、チェ・スンシルの娘であるチョン・ユラの不正入学疑惑がクローズアップされたのである。


ドイツで「夢は東京オリンピックに出場することです」と語るチョン・ユラ。

2017年1月7日土曜日

地震、防川、総合試験

2016年9月12日(月)
夜7時45分、8時30分、隣りの慶州でマグニチュード5の地震。まずゴーッという地鳴りのような音が聞こえ、ガタガタガタッと固い横揺れが続く。日本の感覚だと震度3程度の揺れだが、地震がないと言われていた韓国では大騒ぎになった。その後も現在まで余震が続いているが、もう誰もあまり気にしなくなった。耐震建築、耐震設備が不十分な韓国では、より大きな地震が来た場合かなりの被害が出るものと思われる。先日朝5時頃、テレビや携帯から突然警告音が鳴り出し、目が覚めてしまった。揺れがあったらしい。3、4か月かかって、ようやく地震警報の態勢が整ってきたのだろうか。

9月14日~18日は秋夕(チュソク)の5連休。パリ・バゲット、コンビニ、畜産マート(近所の肉屋)はずっと営業していた。好天気が続いたが、17日(土)だけ雨、テグハルでの授業のあとC君の車で寿城池(スソンモ)へ出かけて学生たちと食事。


 寿城池の噴水ショー。


 9月22日、24日、25日。この週は3度も防川市場へ。


「Mr.ヤンコッチ」 羊の串焼き




 最後の写真はモンティギといって牛の生肉で、大邱周辺ではよくあるメニューなのだが、ユッケというメニューはまた別にあり、その違いがよくわからない。これは「The Butcher」という、ちょっと不穏な名前の牛肉専門店。

10月7日、総合試験の日。秋らしくなってきた。総合試験は卒業試験とも呼び、第4学期には必ず受けなくてはならない。韓国学科のイ・スハン先生からは「韓国社会の儒教的変換について論ぜよ」、指導教授のチェ・チェモク先生からは「禅の意味、あるいは禅仏教の特徴を説明せよ」という出題があり、14時から始まり、2時間以内に答案用紙に書いて提出する。これらは事前に問題を教えてくれるので、準備してメモを作り、試験ではそれを清書すれば良かったので、まあ形式的な試験ではある。ベトナムのN君、中国のMさん(博士課程)と一緒に受けた。どのような評価を受けたのかはわからないが、合格はしたらしい。

2017年1月1日日曜日

秋学期

9月5日より秋の新学期。大学院最後の学期だが、実は終了に必要な単位は既に取得しており、補充科目(学部授業)だけが残っている。大学院の授業はもう受けなくてもいいのだが、それではもったいないので、韓国学科の授業からは受けたことのない先生の授業を1つ、それ以外は指導教授の崔先生の哲學科の授業を選んだ。

月曜日 
 정용교「 한국학특수과제연구 」 (韓国学特殊課題研究) 9:30~12:00
 今期の韓国学科は7名。韓国人2名、中国人1名、ベトナム人3名、日本人1名。정용교先生は社会学の教授で、東アジアと韓国社会の比較研究や多文化共生などの研究をしている。ベトナムやカンボジア等でのフィールドワークも多い。テキストは今学期用に先生が選んだいくつかの論文を複写・製本したもの。小生の担当は「세계화시대 한국문화 발전의 방향모색」(世界化時代 韓国文化発展の方向模索)という論文で、要約したものを発表し、皆で討論する。それ以外に、自分では「少子高齢化社会 日本と韓国の比較」というミニ研究を発表した。
정용교先生は闊達、リベラルな人で、皆の発言をうながし、全体の話の流れをまとめる授業は楽しかった。授業後、皆と一緒に昼食を食べることも多く、これほど授業+昼食とつきあってくれた先生はいなかった。成績は「A」をもらった。

 이수환「조선시대사특강」(朝鮮時代史特講) 13:30~14:45
 補充科目として指定された李樹煥先生の学部授業である。「朝鮮時代史特講」の内容は先生の専門である朝鮮の書院の歴史である。中教室で30人くらいの学部生と一緒に受講。結果的に李先生の授業は3学期もの間受けることになった。聞き取りが難しく苦手意識をずっと持っていたのだが、それでも徐々に理解できるようになった。授業中ずっと板書をしてくれることも助かる。
 朝鮮時代の書院は両班文化の継承、儒教性理学教育の中心的な機関である。植民地史観というのがあって、日帝時代に儒教は朝鮮の歴史を停滞させ近代化を阻害した古き悪しき文化・学問という概念が一般的であった。独立後もそのような儒教否定論の影響は歴史学の世界に長く残った。民主化が達成された80年代以降、ようやく韓国に残る書院の古文書などを実証的に研究することが始まり、李先生もそういう新しい研究の担い手の一人である。書院の歴史から朝鮮社会の身分制、文化的葛藤、習俗、思想の変遷などを本格的に研究することはようやく最近始まったばかりなのである。
 慶尚北道は韓国で最も書院の歴史がある地域であり、紹修書院、陶山書院などを訪ねたこともあるので、テーマは興味深かった。中間試験、期末試験を受けて、成績は「B+」。

최재목 「동양철학방법론연구」(東洋哲学方法論研究)15:00~17:00
 崔在穆先生の大学院哲学科の授業。先生の専門は陽明学だが、この授業は李退溪の「聖学十図」を読むという朱子学本流の内容。この本は韓国の儒学を大成させた李退溪が儒教の古典を編集し補足したもので、韓国漢文学、性理学の基本文献の一つ。漢文を韓国語で読み、その解釈を学ぶものだが、漢文や儒教の基本知識がないとなかなか歯が立たない。8人ほどの学生は老若さまざまで、チェ先生の幅広い教養を楽しむような授業だった。「A+」をもらう。

火曜日 14:00~15:30   18F韓国学科講義室で初級日本語を教える。3名。

水曜日 14:00~16:00   日語日文科資料室で中級日本語を教える。JLPTのN1~N3のテキストから、読解、語彙、聞き取りなど。4名。
    19:00~20:30  正坪(チョンピョン)のカフェでKさんに個人授業。月に1回はテグハルで。東野圭吾「ガリレオ」シリーズの短編などを読む。

木曜日 12:00~13:15   이수환「조선시대사특강」(朝鮮時代史特講)
 補充の学部授業は火と木、週に2回である。韓国学科の3人のベトナム人(ナム、トゥック、ティーエン)と一緒に受講する。

土曜日 テグハルでの授業。17:00~18:30 , 19:00~20:30  3人から5人
 30代の社会人が中心で中級ビジネス日本語。教材は色々と試してみた。テグハルのインターンだった静岡大学から慶北大学に交換留学していた中国人女子学生が参加することもあった。土曜の夜なので、授業のあと皆で食事に行くことも多かった。

2016年12月28日水曜日

晋州冷麺

 8月3日。新梅の「진주냉면」(晋州冷麺)に4日連続で行く!


 最後に食べたビビンネンミョンはダメだった。普通のムルネンミョン(写真)が美味也。

 8月6日 リオデジャネイロ、オリンピック開幕式。テグハルで日本語を教えている4人と刺身の店に。
 8月8日 天皇陛下お言葉(生前退位)。イチロー、3000本安打(マイアミ・マーリンズ)。
 8月11日 この日から新しい祝日「山の日」。8月12日が本来のプランだったが、御巣鷹山日航機墜落の日(あれから31年)なので11日になった由。
 8月15日 光復節、終戦記念日。この日を韓国で迎えるのは初めて。
 8月16日 補充課目申請、インターネットでは案の定満席でうまく行かず、K助教に任せることに。말복(末伏)なので、韓国学科のナム君(ベトナム)と参鶏湯を食べる。
 8月は3つ連続台風が来襲し、東京の自宅も被害を受ける。暴風が吹き上げ、台所から雨漏りがあったのだ。
 8月21日 中井にある目白大学で通訳・観光案内士試験を受ける。自信はあったのだが、11月に発表があり、不合格。この頃、村田沙耶香「コンビニ人間」、崔実「ジニのパズル」を読む。
 9月2日 嶺南大学HPのためのインタビューを受ける。

 https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=1288639231159689&id=140220872668203

  内容は大邱新聞のものと大差はないが、奨学金をもらっているので、ささやかなお返しのつもりで学生たちに日本語を教えているという話もした。

2016年12月28日(水)

 4か月ぶりの投稿也。9月から12月までの最後の学期を振り返って書いてみたい。facebookやtwitterばかりやっていて、ブログを書くのが面倒に思えたのだが、ようやく暇ができたので、これから数日かけて・・。
 その前に、2016年の夏のことをアトランダムに少しずつ。
 7月16日、出来たばかりの「バスタ新宿」から三島へ。
 新宿14時 → 三島北口15時50分。





 熱海の友人に会うために利用。このターミナル、コンビニがない、女性トイレが足りないなどオープン時の設備が不評だったが、今はかなり改善されたらしい。
 新宿からの高速バスはビルの谷間に点在していて不便だったが、この統合施設の完成で関東近郊なら手軽にバスで行けるようになった。名古屋、大阪、その他もっと遠い都市へも行ける便があるのだが、小生には機会がないかも。韓国では高速バスに乗れば主要都市に1時間~3時間くらいで行くことができる。それだけ日本は国土が広いということなのだが、韓国のバス網は実に便利である。12月に東大邱駅にも新しい統合バスターミナルが完成した。
 熱海に1泊。夕食は三島の「うな繁」。今年最後の鰻重だったが、あっさりしすぎて不満だった。
 翌朝は「カメダ」珈琲でトースト。昼食は熱海「更科」で蕎麦。女性4人と再会のランチ。
 この前後に読んだ本は、柳澤健「1974年のサマークリスマス 林義雄とパックインミュージックの時代」、好村兼一「いのち買うてくれ」。
 7月11日、下高井戸シネマで韓国映画「花、香る歌」=原題は「도리화가」(桃李花歌)を観る。スジ、リュ・スンリョン主演。スジのパンソリはまあまあ頑張っているが、当たり前だが「西便制」には遥かに及ばない。


 7月30日、テグハルで「サブカルチャー講座 日本アニメーションの歴史を中心に」講演。日本語文学会主催。日本国際交流基金後援。
 7月31日、小池百合子圧勝。千代の富士死去。

2016年8月18日木曜日

釜山行

この夏観客数1100万人を突破した映画「釜山行」(プサンヘン)を観る。入場料はプライム価格とかで高く、9000ウォン(学生割引で7000ウォン)。


徹底した娯楽作品で、ソウルから釜山へ走るKTXの列車内だけが舞台のゾンビ映画。人物配置やら、現代韓国の世相を風刺するなどの工夫はされているが、とにかく主人公たちとゾンビたちとの死闘の連続。いったいどんな展開になるのか見通せずハラハラドキドキ、要はそれだけの、暇つぶしにはぴったりの映画だった。


主演はコン・ユ。コン・ユが好きな韓国人女性は多いネ。小生にはさっぱりわかりません・・・

助演にチョン・ユミ、マ・ドンソク。
マ・ドンソクは相変わらず腕っぷしに物を言わせる役で、なかなか味がある。

とにかくゾンビに食われると忽ちゾンビに早変わりする。その早さ、せっかちさが韓国らしくて、映画のスピード感を出している。

2016年8月12日金曜日

仁川上陸作戦

7月27日公開以来、観客数550万人を突破した「仁川上陸作戦」を観る。




イ・ジョンジェ = 仁川上陸作戦成功のために諜報活動を遂行する海軍諜報部隊大尉

イ・ボムス  = 仁川を掌握する北朝鮮軍司令官

リーアム・ニーソン = ダグラス・マッカーサー将軍

製作費は約14億円。リーアム・ニーソンの出演料は2億円だという。観客数700万人が目標で、全米公開も間近となり、順調な興行成績を収めている。


イ・ジョンジェたちは「X-ray」作戦という名の諜報部隊で、仁川を占領している北朝鮮軍に合流する。もちろん全員が北朝鮮軍の軍服を着ており、北朝鮮訛りで話すので、最初のうちは怪しまれない。
しかし、イ・ボムス扮する司令官が次第に疑問を抱く・・・という展開である。
イ・ジョンジェが格好いいのは相変わらずだが、イ・ボムスが強烈なキャラクターで迫力がある。このために7キロも増量したとかで、傲慢狡猾で猜疑心に満ち、腕っ節の強い司令官を怪演。

結論から言うと、諜報部隊の献身と犠牲により、仁川上陸作戦は奇襲に成功するという流れは誰にでも予想できる。そのために仁川上陸のクライマックスまでにいかに盛り上げるか、という単純な映画である。仁川上陸そのものはCG映像が多いし、上陸後の戦闘も描かれない。

試写会の段階では「時代遅れの反共映画」などという酷評も見られたそうだが、封切りされると大ヒット。若者よりも年配者の観客が多いらしい。

この映画は一部で「クッポン」という評価を受けている。国家(クッカ)と覚せい剤のヒロポンの合成語で、クッポンとは、民族主義やナショナリズムを過剰に煽り立てる「愛国マーケティング」を揶揄したり卑下して言うことらしい。

「国際市場で会いましょう」(原題「国際市場」) →朝鮮戦争
「延坪海戦」                      →北朝鮮との海戦
「バトルオーシャン 海上決戦」(原題「鳴梁」) →李舜臣
「鬼郷」                         →慰安婦
「暗殺」                         →独立運動

などの作品が過去の記事で「クッポン」と言われたそうだが、そんなふうに考えると「徳恵翁主」だってそうである。日帝の支配を憎むあまり、李朝王族までが抗日独立運動に加担するというトンデモ・ストーリーなんだもの。

近代史、現代史に映画の題材を求めれば、製作者・監督は国民の感情に強く訴えることを狙い、あざとい演出や歴史歪曲が当たり前のようになってしまう。
韓国映画は、とにかく刺激的で、ダイナミックならそれで良しとするようなところがある。

「仁川上陸作戦」の場合は、敵は北朝鮮人民軍であり、共産主義であるとはっきりしていて、そこに「民族同胞が殺しあう悲劇」などといった観点はほとんど入らない。そのほうが明快な勧善懲悪の娯楽映画に徹することができるからだ。
北朝鮮にシンパシーを持つ人、現政府に批判的な人たちは、それを批判して「クッポン」という言葉を使うのだろう。
リーアム・ニーソンのマッカーサーは、確かに適役なんだけど、従来のイメージ通りのマッカーサーでしかない、という批評も出ていましたね。