松林寺 大邱・八公山(パルコンサン)にある名刹

2015年9月28日月曜日

二度目の20歳

tvN(トータル・ヴァラエティ・ネットワーク)というケーブルテレビ放送が見られるので、「두번째 스무살」(二度目の20歳)というドラマを最初から見ている。




チェ・ジウ主演の学園ドラマ(恋愛+コメディ)。主婦ハ・ノラが心機一転、40歳で大学に入学する。
そこには息子が学生として通い、離婚でもめている夫が教師をしており、高校時代にハ・ノラを想っていた同級生も教師をしていた。
息子の恋愛、夫の浮気、同級生との恋の復活など、こう書くとうんざりするような設定だが、韓国ドラマはコメディが一番というのが小生の持論。役者も皆達者である。
小生はチェ・ジウをあまり好きではないのだが、主人公が二度目の20歳という気持ちで、若者に混じって四苦八苦、大学生生活に奮闘するというところに共感したのだった。
小生は三度目の20歳なのだ…
共感できた慣れぬ大学生活への悪戦苦闘ぶりは冒頭のあたりだけで、あれやこれやのドタバタ恋愛コメディとなって展開していくと、もう小生の暮らしとは何の共通点もなく、共感も何もあったものではない。
セリフで聞き取れるのは50~60%くらいだろうか。しかし最初から見ているので、かなり見当はつくのである。
10月からtvNでは「응답하라 1988」(応答せよ1988)が始まる。
この間の夏休みに「応答せよ1997」「応答せよ1994」をすべて見ているので、こうなったら第3シリーズも見なくては。韓国でブームとなっている、80年代、90年代を懐かしむドラマである


チョン・ウンジ → 「応答せよ1997」主演。歌も演技も上手い。


ソン・ナウン → 「二度目の20歳」で息子の恋人、オ・ヘミ役。

この2人はガールズ・グループ「A-pink」のメンバーである。

映画「ベテラン」





この夏、映画「暗殺」に次ぐ観客動員数を記録した「ベテラン」。日本でも公開が決まったらしい。





韓国映画のお家芸である警察・犯罪もの。
暴虐にして傲岸不遜な財閥の御曹司(ユ・アイン)対一匹狼の刑事(ファン・ジョンミン)。
権力をほしいままにする巨悪をスーパンマン刑事がたった一人でやっつけるという、明快な勧善懲悪のアクション映画。
ファン・ジョンミンは決して二枚目ではなくて、刑事もヤクザも、純情男から凶悪犯まで、幅広い芝居が(少しユーモラスに)できるという、不思議な役者だ。ミュージカル俳優出身だというから、また驚かされる。
ユ・アインも狂気に満ちた財閥二世の横暴ぶり、切れ味が良かった。
「暗殺」における「日本」のように、「財閥」も文句なしの「悪」として、徹底的に叩きのめすところが観客には受けるのだろう。


2015年9月27日日曜日

群山踏査会(2)


1945年創業、韓国で一番古いベーカリー、李姓堂(イソンダン)はいつも長蛇の列。幹事の人が並んで、アンパンとカレーパンを一行(40人くらい?)に配ってくれた。帰り道におやつとして食べたが、可もなく不可もなくの味也。


蔡萬植(チェ・マンシク)文学館。群山出身の作家。代表作に「濁流」「太平天下」などがある。日本語訳の本は東京にあるのだが、未読。1950年に肺結核で死去。当時の著名作家は日本に留学し、大戦末期には親日的著作を発表した人物が多い。蔡萬植にもそのような作品があるが、文学館の女性の話では、親日派とは認定されなかったらしい。


鉢山里五層石塔。新羅時代。


竹山里塔洞三層石塔。高麗時代。



古代の史跡から現代の名所まで駆け足の一日。
初秋の気候は暑くもなく寒くもなくで、穏やかな一日也。
帰りのバスの中では各自簡単なスピーチをしただけで、歌も踊りも酒の強要もなく、その辺はほっと胸をなでおろす。数人の人たちとしか話せなかったが、教師、主婦、漢方医など、歴史に関心のある中高年と子供たちが数名のバスツアー。会費は3万ウォンだった。次回は堤川へ行くという。

群山踏査会(1)


2015年9月20日(日) 全羅北道群山(クンサン)へ。これは1908年に建てられた群山税関。


「嶺南仏教文化研究院」が月に一度行う「踏査会」(歴史ツアー)に参加した。
大邱からバスで片道3時間、錦江(クムガン)の河口にある群山は人口26万、高層ビルはあまり見かけず、昔の韓国の町並みが比較的残っている。
大邱よりはどこかのんびりとした風情があり、映画「八月のクリスマス」は(昔のソウルの街という設定で)この町で撮影された。「八月のクリスマス」は好きな映画で、引退したシム・ウナの代表作のひとつだ。


ハン・ソッキュの写真館など、撮影ゆかりの建物がガイドブックには載っていたが、この日は歴史ツアーなので立ち寄れず。
湖南平野の穀倉地帯からの米の積出港として栄えた群山には戦前1万人の日本人が住んでいたという。古くは白村江の戦いに始まり、この地域の歴史は日本と縁が深い。



韓国でこのように広大な田圃が続く風景は初めて見た。



京岩洞(キョンアムドン)レール村。製紙工場への2・5キロの鉄道跡に家が立ち並び、鉄道ファンも必ず訪れる名所らしい。


昼食は麦飯野菜ビビンバ。ドンドン酒も旨し。全羅道の食べ物はやはり美味しい。ちりめんじゃこまでビビンバに入れたのは初めてだ。大邱では飯饌(パンチャン)にちりめんじゃこは高いから出ません。港町ならでは也。





月明洞(ウォルミョンドン)の近代歴史家屋。日本人の残した敵産家屋(チョクサンカオク)を観光用にリモデリングして食堂、カフェ、旅館、土産物屋などにしたもの。
どれも均一なデザインで新築した日本式家屋ばかりで、浦項の九龍浦近代文化歴史通りのような風情には欠ける。
駆け足のツアーなので、一番有名な旧広津家を見学できなかったのが心残り。


東國寺(トングクサ)。1909年に曹洞宗「錦江寺」として建てられた。韓国に唯一残る日本式寺院建築。1947年から「東國寺」。


「曹洞宗」が削り取られている。


「昭和」が削り取られている。




これは日本式の梵鐘なので、様式を解説する金在元先生。


http://tousikai.web.fc2.com/images/sannjyamonhibun.pdf

曹洞宗の懺謝文が日本語と韓国語で刻まれている。この碑の前には慰安婦少女像。




寺の中には、かつての抗日僧侶と親日僧侶の写真と名前が展示されている。永遠に親日と呼ばれ悪役に名指しされた僧たちが不憫。



小ぶりな質感の優しい建物には好感が持てたが、形通りの贖罪史観と収奪史観が展示されていて、少々げんなり。金先生もツアー一行も淡々としていて、その辺は気が楽也。

2015年9月6日日曜日

映画「暗殺」


先週から新学期が始まった。授業の様子などはもう少し時間を置いてから書くことにする。
韓国に住んで約2年になるが、実は初めて映画館に行った。

映画「暗殺」。キョンサンネゴリにあるロッテシネマで。


「反日映画」と言われているので、アンジェリーナ・ジョリーの「アンブロークン」のように日本では公開されない可能性がある。
7月22日に公開され、一か月半ほどで観客動員数1200万人を突破した。韓国映画の興行成績ランキングで歴代6位となり、もちろん今年最大のヒット作だ。
キャストは豪華、140分の長尺、製作費をふんだんに使ったと思われ、上海や京城の町並みや風景、CGとセットはかなり上出来である。
主演は、チョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウ。
脇を固めるのは、オ・ダルス、チョ・ジヌン、イ・ギョンヨン、チェ・ドクムン、キム・ヘスクなど、おなじみの俳優ばかり。既視感があると思ったら、「10人の泥棒たち」(2012)の監督であり、役者もかなり共通している。
チョ・スンウが独立運動家・金元鳳役でカメオ出演。

1933年の上海と京城が舞台。上海にある大韓民国臨時政府は、朝鮮駐屯軍司令官カワグチ・マモルと親日派カン・イングク(イ・ギョンヨン)を暗殺するために3人を指定する。
韓国独立軍の狙撃手アン・オクユン(チョン・ジヒョン)、新興武官学校出身「速射砲」チュ・サンオク(チョ・ジヌン)、爆弾専門家ファン・ドクサム(チェ・ドクムン)。

金九の信任を受ける臨時政府警務局隊長(実は日本に内通)ヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)。

誰かに依頼を受けた殺し屋「ハワイ・ピストル」(ハ・ジョンウ)と、その相棒ヨンガム(オ・ダルス)。

彼らが入り乱れて派手な銃撃戦とアクションを次々と繰り広げるので、誰が敵か味方か、正直ストーリーがよくわからなくなる。
クライマックスは、京城の三越で行われる司令官の息子(悪逆非道の将校)キムラと親日派の巨頭カン・イングク(イ・ギョンヨン)の娘ミチコ(チョン・ジヒョンが二役)の結婚式に乱入しての大殺戮・大銃撃戦。

暗殺作戦は成功するが、登場人物たちはほとんど死んでしまう。
光復後、一人生き残ったヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)は、親日派裁判も勝ち抜き、しぶとく生き続けようとするが、最後のどんでん返しがあり、イ・ジョンジェ、まことに格好良い死に方をする。





結論から言うと、大活劇歴史アクションというべきか、普通に娯楽映画として十分楽しめた。独立運動と暗殺作戦がモチーフなので、日本人として部分的に神経にさわる箇所はあるものの、1930年代の満洲を舞台にした活劇「グッド・バッド・ウィアード」(2008)のような、ファンタジー兼アクション映画と割り切って楽しめる作品ではないかと思う。

韓国でこの作品を見た人のブログ等を見ると、辛口の意見もあった。
自分たちは日本統治に激しい抵抗運動を行ったと思い込んでいる反日感情の強い国民に迎合した「反日マーケティング」、映画を通じた「歴史の記憶」の修正であり、かつ中国市場を狙った「対日歴史共闘」であるという。
もちろんそのように見ることもできるのだが、この映画の中の支配者・日本は紋切り型の悪役でしかなく、むしろイ・ジョンジェやイ・ギョンヨンのような親日派のほうが、人物の陰影が描かれていて、なかなか味わいがあった。
日本語のセリフも実に多い。韓国人俳優が日本人の役をするので、ほとんどの日本語が韓国なまりで、これもちょっと微笑を誘う。ハ・ジョンウが日本人に化けるシーンがあるが、いくら何でもそれではバレてしまうだろうという日本語。ところが、だまされる将校・キムラも韓国人俳優なので、彼の日本語もなまっているのである。日本軍の女性電話交換手の日本語だけが自然だったので、彼女たちは日本人なのかなと思ったくらい。

なお、チョ・スンウ扮する独立運動家・金元鳳(キム・ウォンポン)は少ししか登場しないのだが、彼は光復後北朝鮮に渡り、高官となる(後に粛清)ために、これまで韓国では評価されない人物だったのだが、最近の韓国国内の左派から再評価の機運があり、この映画はそれに応えたものだと知人から聞かされた。

韓国で映画館にこれまで入らなかったのは、ヒヤリングに自信がなかったからだ。
この映画もセリフは半分くらいしか聞き取れなかったために複雑なストーリーの一部が???ではあるが、語学のトレーニングのためにも、映画やドラマをもっと見なければ、とあらためて思ったのだった。