松林寺 大邱・八公山(パルコンサン)にある名刹

2015年9月6日日曜日

映画「暗殺」


先週から新学期が始まった。授業の様子などはもう少し時間を置いてから書くことにする。
韓国に住んで約2年になるが、実は初めて映画館に行った。

映画「暗殺」。キョンサンネゴリにあるロッテシネマで。


「反日映画」と言われているので、アンジェリーナ・ジョリーの「アンブロークン」のように日本では公開されない可能性がある。
7月22日に公開され、一か月半ほどで観客動員数1200万人を突破した。韓国映画の興行成績ランキングで歴代6位となり、もちろん今年最大のヒット作だ。
キャストは豪華、140分の長尺、製作費をふんだんに使ったと思われ、上海や京城の町並みや風景、CGとセットはかなり上出来である。
主演は、チョン・ジヒョン、イ・ジョンジェ、ハ・ジョンウ。
脇を固めるのは、オ・ダルス、チョ・ジヌン、イ・ギョンヨン、チェ・ドクムン、キム・ヘスクなど、おなじみの俳優ばかり。既視感があると思ったら、「10人の泥棒たち」(2012)の監督であり、役者もかなり共通している。
チョ・スンウが独立運動家・金元鳳役でカメオ出演。

1933年の上海と京城が舞台。上海にある大韓民国臨時政府は、朝鮮駐屯軍司令官カワグチ・マモルと親日派カン・イングク(イ・ギョンヨン)を暗殺するために3人を指定する。
韓国独立軍の狙撃手アン・オクユン(チョン・ジヒョン)、新興武官学校出身「速射砲」チュ・サンオク(チョ・ジヌン)、爆弾専門家ファン・ドクサム(チェ・ドクムン)。

金九の信任を受ける臨時政府警務局隊長(実は日本に内通)ヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)。

誰かに依頼を受けた殺し屋「ハワイ・ピストル」(ハ・ジョンウ)と、その相棒ヨンガム(オ・ダルス)。

彼らが入り乱れて派手な銃撃戦とアクションを次々と繰り広げるので、誰が敵か味方か、正直ストーリーがよくわからなくなる。
クライマックスは、京城の三越で行われる司令官の息子(悪逆非道の将校)キムラと親日派の巨頭カン・イングク(イ・ギョンヨン)の娘ミチコ(チョン・ジヒョンが二役)の結婚式に乱入しての大殺戮・大銃撃戦。

暗殺作戦は成功するが、登場人物たちはほとんど死んでしまう。
光復後、一人生き残ったヨム・ソクチン(イ・ジョンジェ)は、親日派裁判も勝ち抜き、しぶとく生き続けようとするが、最後のどんでん返しがあり、イ・ジョンジェ、まことに格好良い死に方をする。





結論から言うと、大活劇歴史アクションというべきか、普通に娯楽映画として十分楽しめた。独立運動と暗殺作戦がモチーフなので、日本人として部分的に神経にさわる箇所はあるものの、1930年代の満洲を舞台にした活劇「グッド・バッド・ウィアード」(2008)のような、ファンタジー兼アクション映画と割り切って楽しめる作品ではないかと思う。

韓国でこの作品を見た人のブログ等を見ると、辛口の意見もあった。
自分たちは日本統治に激しい抵抗運動を行ったと思い込んでいる反日感情の強い国民に迎合した「反日マーケティング」、映画を通じた「歴史の記憶」の修正であり、かつ中国市場を狙った「対日歴史共闘」であるという。
もちろんそのように見ることもできるのだが、この映画の中の支配者・日本は紋切り型の悪役でしかなく、むしろイ・ジョンジェやイ・ギョンヨンのような親日派のほうが、人物の陰影が描かれていて、なかなか味わいがあった。
日本語のセリフも実に多い。韓国人俳優が日本人の役をするので、ほとんどの日本語が韓国なまりで、これもちょっと微笑を誘う。ハ・ジョンウが日本人に化けるシーンがあるが、いくら何でもそれではバレてしまうだろうという日本語。ところが、だまされる将校・キムラも韓国人俳優なので、彼の日本語もなまっているのである。日本軍の女性電話交換手の日本語だけが自然だったので、彼女たちは日本人なのかなと思ったくらい。

なお、チョ・スンウ扮する独立運動家・金元鳳(キム・ウォンポン)は少ししか登場しないのだが、彼は光復後北朝鮮に渡り、高官となる(後に粛清)ために、これまで韓国では評価されない人物だったのだが、最近の韓国国内の左派から再評価の機運があり、この映画はそれに応えたものだと知人から聞かされた。

韓国で映画館にこれまで入らなかったのは、ヒヤリングに自信がなかったからだ。
この映画もセリフは半分くらいしか聞き取れなかったために複雑なストーリーの一部が???ではあるが、語学のトレーニングのためにも、映画やドラマをもっと見なければ、とあらためて思ったのだった。

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